<研究テーマ>
・高出力レーザの開発
・光ファイバレーザの開発
・レーザパルスの伝播シミュレーション
キーワード:フェムト秒
フェムト秒とは時間の単位で、1000兆分の1秒の時間をさします。光は1秒間で地球7周半(30万キロ)の距離を進むことができます。しかし、この1フェムト秒の時間で光は、0.3マイクロメートル(μm)しか進むことができません。シャボン玉の膜の厚さが数マイクロメートルくらいですから、その厚さすら光が進めない時間が1フェムト秒です.フェムト秒レーザとは、このフェムト秒の時間幅に高強度の光を集中させたパルス光のことです。
産総研HPより引用
高強度のレーザを物質に照射すると、物質が爆発的に浸蝕され、蒸散する現象(レーザアブレーション)が引き起こされますが、時間的に高密度の光子が集中したフェムト秒レーザでは、他のレーザによるアブレーションとは異なる特殊な浸蝕・蒸散現象が見られます。過去に、フェムト秒レーザによる有機物質のアブレーションに注目して研究を進め、
1994年に世界で初めて5光子吸収によるテフロンの加工を行いました。(Applied Physics Letters, Vol. 65, No.
14, pp. 1850-1852, 1994.)
現在はその時に用いた大型で複雑なフェムト秒チタンサファイアレーザ再生増幅システムに代わるコンパクトで構造が単純な新しいフェムト秒レーザの開発を行っています。
産総研HPより引用
また、最近ではフェムト秒レーザによる透明物質の内部改質を利用した2次元光回路の作製の応用研究も行われつつあります。
2次元あるいは3次元光回路や3次元フォトニック結晶構造による光メモリなどがフェムト秒レーザ光の多光子吸収効果で実現すれば電気電子システム工学の発展に大きく寄与する事になります。
・高出力レーザの開発
最近注目されている透明なセラミック材料を用いたレーザ開発を行っています。セラミックは熱に強いため、高出力レーザ発振実験(出力6.8Wの高パワー、プラスチック等に当たると即時溶けて焼け焦げます)を行っており、レーザ加工器への応用を目指しています
。このレーザをまず波長可変レーザ改造しました。その結果、Yb:YAGレーザとしては世界で最も広い波長域を得ることが出来ました.また、その後モード同期レーザに改造して210フェムト秒が得られました
。これはYb:YAGセラミックレーザとしては世界で初めてフェムト秒レーザが得られただけでなく、カーレンズ効果を用いていないフェムト秒セラミックレーザでは世界で最も短いパルスが得られました
。フェムト秒とはピコ秒の千分の1で、10-15秒という極限の短い時間です。これにより加工能力が飛躍的に向上し、精密な微細加工が可能となります
。また多光子吸収効果によって透明物質を加工したり、屈折率を局所的に変えることによって例えば溶融石英ガラスブロックに2次元あるいは3次元光回路を造る事が可能となります。
・光ファイバレーザの開発
フェムト秒ファイバレーザの開発を行っています。更に最近注目されているフォトニック結晶ファイバ(植物のレンコンの様に空気の穴がたくさん開いている光ファイバ)を用いた光パルスの広帯域化および短パルス化の実験もおこなっています。
ポンププローブ法による半導体や磁性体の物性値の計測への応用や、周波数標準に用いる光コムへの応用、さらに光と電波の中間の特性を持つテラヘルツ波を発生させるための光源としての応用を目的としております。テラヘルツ波はx線に比べ人体に対して安全な透視技術に応用できるので最近注目されています。
CrystalFiber社HPより引用
・レーザパルスの伝播シミュレーション
携帯電話等の搬送波であるマイクロ波のアンテナ解析に良く用いられているFDTD法という手法でシミュレーションを行います。主に光ファイバを数フェムト秒の光パルスが伝播する様子をシミュレーションします。1次元では既にファイバ中の各種非線形現象の実験との比較を行いました。現在は2次元シミュレーションコードを開発中です.最終的には3次元コードを開発し、近接場光学の研究や光アシスト磁気ディスクの解析を目指します。 |